36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
審査員特別賞 大切なこと
神奈川県立横浜平沼高等学校 三年 早川 茉優

 「突然悟りました。私は行かなければなりません。PCや携帯など、私は何もできません。生きていて何の意味がありますか?」
 これは、台湾の孫とチャットができないと絶望した男性の遺書の一部である。私はネットでこのニュースを読み、胸がズキンと痛んだ。しかし、それと同時にこの事件はいつ起きても不思議ではなかったのではないかと感じた。寧ろ、これから増えていく気がしてならない。
 どうして私はそのように感じたのか。どうしてこのような悲劇が起きたのか。それは、情報化社会に置いていかれる高齢者とそんな社会にのめりこむ若者との格差にあるだろう。今回自殺した男性は、大好きな孫に会っても彼らはスマホやPCに忙しく、疎外感を感じたという。これはまさしく現代の社会を象徴する一場面だ。若者たちは身近な友人から、みず知らずの人まで、画面を通じての交遊にばかり気を取られている。私も母が話しかけているのにも関わらず、スマホに夢中で聞いていないということがある。今、こうして書いていて気付いた。私は本当に大切な関係を懐しかねない、ということを…。
 そもそも、メールなどは「大切な人と気軽にコミュニケーションをとれる」というのが売りであった筈だ。しかしそれが逆に本当に大切な人との会話を邪魔していると言えないだろうか? 私も含め、家族となんていつでも話せるから友人との「対画面」トークを優先している人は少なくないだろう。その時間を「対人」トークに費やした方が良い。今日あったことを文字と記号にするより、声と表情にした方が絶対によい。無機質な言葉よりもその人の口から発せられた言葉の方が温かく、幸せな気持ちになれる。そんなことは私にも分かっていたことだ。改めてこのように気付けた私は伝えたいことがある。私と同じような若者たち、そして私自身へ。二度とあのような事件が起きないように。自分の手の中の機械を置いて、前を見よう。

講評

 スマートフォンや携帯電話、パソコン、SNSを身近に感じ、使いこなしている高校生から、「画面を通してのコミュニケーションを優先するのではなく、対人トークに費やした方がいい」という問題提起をした着眼点を評価しました。現代の若者が最新の機器に依存するのではなく、こうした昔からある人と人のコミュニケーションを大切にしたいという気持ちを持っていることに安心しました。文章も素直で、一生懸命書いている気持ちが読者に伝わってきて、好感を持てます。

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