36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

エッセイコンテストも今年で12回目。過去最高に迫る応募作品があったことに加え、最終審査に残った作品はどれも甲乙付けがたく、例年以上に量も質も充実していました。今年は分野の再編もあり、新たな審査員も加わるなど、今までとは違った点もあると思います。そんな感想や気付いたことを、審査員の皆さんにお話ししていただきました。

審査員プロフィール

応募数は少ないが、レベルは高かった第3分野。
二木 今年は9511点の応募があり、応募数が最も多かった第5回とほぼ肩を並べる多数の応募がありました。
 しかも、プレ審査・一次審査を通過して本審査まで残った作品はどれも粒選りで、今年はどの作品を選ぶか迷いました。全体的にレベルが上がったと思います。
杉山 「私はこれが一押しです」と審査員が熱く語る作品がいくつもあり、例年以上に盛り上がりましたね。
二木 今年はテーマの見直しを行い、第1回・第2回に行っていた「世界」をテーマにした第3分野を設けました。新しい分野なので、応募数は必ずしも多くありませんでしたが、いい作品が多かったのが印象的でした。
中田 私も、そう感じました。第3分野で本審査に残った作品は、どれも良かったです。高校生になって自分が関わる範囲が広がり、いろんな体験を通して、世界と日本とのつながりや様々な違いを感じる機会が増えたのでしょう。
二木 驚いたのは、10年くらい前なら「世界」と言えば「欧米」との関わりや比較が当たり前でした。ところが、今回は本審査に「アメリカ」を取り上げた作品は一つも残らず、中国やアジア諸国との関わりばかりだったこと。アジア諸国との交流が増え、関係を重視している時代の流れが反映しているのだと感じました。むしろ若い人の方が、身近なアジアに目を向けているようですね。世の中ではヘイトスピーチが問題になったり、国と国の関係がギクシャクしている話題が取り上げられたりしますが、上から目線で書いた作品も無く、健全な印象を受けました。
角野 作品を読んでいると、外国に行ったことがある高校生が多いことにびっくりしました。もう高校生にとって「海外」は特別なことじゃないのですね。
久野 第3分野は、私の専門である「世界」がテーマですが、人と人のつながりを通して「世界」が見える作品がいいと感じました。人と人のつながりから何かを発見し、それが国と国の理解につながっていく作品を待っています。
川名 テーマに掲げた「世界」は「ワールド」や「グローバル」を意味する「世界」なのに、「領域」的な意味で使われている作品がいくつかありました。第1分野や第2分野に応募していたら、きっともっと高い評価を受けていたと思う作品もあって、ちょっと残念でした。
角野 毎回ある話ですが、「本当にこの分野でいいの?」と思う作品もいくつかありました。第3分野に限らず、違う分野に応募していれば上位に入賞していたのに、分野が違うためにいい内容でありながら入賞の対象から外された作品がいくつかありました。もったいないですね。
板垣 第3分野は新しくできたものですから、テーマをどうとらえて、どのように書いたらいいかが、まだ定まっていないように感じます。「日常のなかでつながる世界」というテーマだと、外国に行ったり、外国人と触れ合うことが真っ先に浮かぶと思いますが、違うアプローチがあってもいいと思います。視点をちょっと変えれば、もっと広げていくことができ、新鮮な気持ちで読むことができます。来年は、意欲的な作品を期待しています。
日常生活の中から「発見」を。
二木 審査員の皆さんは、いろんな観点で作品を読み、採点のポイントは違うと思います。どんな点に注目して採点をしたかを聞かせていただけますか。他の審査員の先生は違うかもしれませんが、私は論理的に書くのがエッセイで、ほのぼのとした話が随筆だと思っています。だから、自分が感じたこと、言いたいことが論理的にまとまっている作品を評価しました。
久野 私は今回が初めての参加でしたので、一つひとつの作品を大変興味深く読ませていただきました。その中で、「発見」をポイントに評価をしました。いろんな体験の中から、作者独自の新しい「発見」をした作品に高い点を付けました。
角野 私は、特別な話をとりあげるのではなく、作者にとって身近な、ごく普通の日常生活の中から何かをすくいとって、深い世界に広げていった作品に共感します。
板垣 私も、何気ない日常の中から、私たちが気付かなかった「発見」が書かれている作品に高い評価を付けました。
川名 私は、「発見し、考える」だけでなく、それが「行動」につながっている作品を高く評価しました。
杉山 私も、身近なことに目を向けて、そこから問題意識が生まれた作品を評価しました。そのためには、感性を磨くことが大切です。今年も、興味深い内容で、文章も上手に書かれている作品がたくさんあり、感心しました。ただ、日本語を大切にすることが最近忘れられがちです。ありふれた言葉を安易に使うのではなく、自分の言葉を使って書いて欲しいと思います。
中田 私もそうですね。自分たちが普段使っている「言葉」一つひとつを大切にして、そこから話を広げていった作品に魅力を感じました。そういう面では、自分の身近な出来事や会話を書きやすい第1分野にいい作品が多かったと感じます。
板垣 第1分野の「人・家族とのふれあい」では、おじいちゃんやおばあちゃんを取り上げた作品が多く、それなりにまとまっているのですが、よほど特徴的な話じゃないと上位に選ばれるのは難しいでしょう。お父さんを取り上げた話が少ないので、いい話にまとまっていると魅力を感じます。ただ、第1分野は家族との話が圧倒的に多く、家族以外の人とのふれあいを描いた作品が減ったのが残念です。昨年まではいい作品があったので、来年は日常での何気ない触れ合いを通して気付いた作品を読みたいです。
出だし・締め・タイトルに気を使って。
二木 来年以降応募される皆さんのために、「ここは気を付けた方がいい」、「こんな作品に期待している」という点があれば、お話しいただけますか?
杉山 コンピュータやスマホといった機械に頼る時代に、人と人が直接会って会話をすることの大切さを改めて考えた若者の作品がいくつかあったことを、非常に嬉しく思いました。今後も、こうした作品に期待しています。
角野 次を読みたくなる書き出しも大切ですが、最後の三行も重要です。むりやり優等生的な結論にまとめてしまう必要はありません。締めがいいと印象が良くなりますし、逆に締めが陳腐だと評価を下げてしまうこともあります。 また、ある作品で主要登場人物があだ名で書かれていたのですが、なぜそのあだ名で呼ばれるようになったかの説明がなく、モヤモヤが残りました。その説明があれば、登場人物をイメージしやすくなります。そんな読者が知りたくなることの説明も忘れないでほしいです。
板垣 状況描写や説明も大切ですが、登場人物が実際に話した言葉が「 」で出てきて、その言葉がイキイキしていると、登場人物の性格が伝わってきて、印象を強めます。
川名 風景の描写だけでなく、音やにおいなど、五感をフルに活用して感じたことを書くと、臨場感がアップします。そうした工夫も効果的じゃないでしょうか。
中田 私は、大人は気付かないようなことに気付く、新鮮な視点で書かれた作品に期待しています。
久野 いくつかの分野で、よくまとまっていて、審査員の評価は全員そこそこ高いけど、「可もなく不可もなく」という作品がありました。それよりも審査員の間で評価が分かれても、「この作品が一押しだ!」と強く推す審査員がいる作品の方が魅力的です。特に第4分野では、そんな荒削りでもいいから大きなテーマに挑戦して、人の心を強く打つ作品に期待しています。
二木 今日は、長時間にわたって審査をしていただき、ありがとうございました。
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