力作の多かった第1分野の中でも、審査員全員が高く評価した作品です。会話文がとてもイキイキとしていて、無くしたマフラーを見つけた時の作者の感動がよく伝わってきます。そして、風に揺れる青いマフラーの情景が目の前に浮かんでくるような描写力が、この作品の魅力をいっそう高めています。
「きれいに縦に二つ折りにされ」「深々と頭を下げた」といった作者独自の表現も文章にアクセントを添えていて、いいですね。日常のささいなできごとを取り上げながら、事実と作者の気持ちをバランス良くまとめており、まさに「エッセイ」と呼ぶのにふさわしい作品だと思います。