36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2012年度 日本福祉大学 第10回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

10回目を迎え、応募点数が増加。新しい学校からの応募も増えました。

エッセイコンテストは、今年が10回目。団体で初めて応募した学校も多数あり、海外からの応募も増えました。応募点数が増えたことも影響しているのか、各分野それぞれに優れた作品が多く、楽しく読むことができました。審査員の皆さんに、今年の感想や、来年応募される方に気を付けていただいた方が良い点などを話し合っていただきました。

審査員プロフィール

例年以上にバラエティーに富んでいました。
加藤 今年は応募点数が8926点で、昨年より1000点以上増えています。この点数は歴代3位の多さです。100点以上応募していただいた団体応募も、初めての学校が7校ありました。募集要項を刷新して角野先生に文章を書いていただいたり、受賞者のコメントや学校の授業などでどう使っているかを書いたことなどが、応募数増加につながったのかもしれません。
板垣 今年は工業高校やインターナショナルスクールに通う生徒さんの応募など、内容が一段とバラエティーに富んでいたような気がします。
杉山 海外からの応募も例年以上に多かったようですね。
加藤 シンガポール、アメリカ、ドイツ、中国など、海外からの応募は87点ありました。海外からの応募はこれまでもありましたが、今年は海外からの応募作が歴代1位の多さで、最終審査まで残った点数も増えました。日本を外から見たり、違う文化と比較することで話に広がりが出るので、海外からの応募にも期待しています。
中田 私は今年が2度目の参加です。昨年は東日本大震災の影響もあって不安な気持ちをエッセイとして綴った作品が目立ちましたが、今年は深みがある作品やメッセージ性の強い作品が多く、読み応えがありました。特に、第2分野にシリアスな内容でいい作品が多かったような気がします。
川名 特に、第1分野と第2分野には良い作品が多かったと思います。読んでいて、考えさせられる作品がいくつもありましたね。第3分野や第4分野は、文章力もありますが、「いいところに気付いたね」という問題提起も評価の対象になります。今回の入賞作の中にも、作者の独自の視点が評価された作品があります。
中田 自分の主張を堂々と書いてあると、読んでいて好感を持ちますよ。
角野 最終的には入賞作には選ばれませんでしたが、政治に興味を持っていないと思っていた高校生が選挙制度に対する疑問を持ち、声を上げた作品が印象に残りました。第4分野は、そんな高校生の視点に立った問題提起も必要ですね。
加藤 第2分野の「あなたにとって家族とは」では、東日本大震災から1年以上経って日々の生活が落ち着いてきた中で、家族との関係を客観化してリアルに書いた作品があるのではないかと期待していましたが、最終選考に残るほどのものがありませんでした。そこが少し残念です。また、第3分野の「わたしが暮らすまち」では、今年は伝承文化を取り上げた作品が少なかったような気がします。もっと我がまちの良さを見つけて欲しいですね。
中田 第2分野では、お父さんやお母さんの話より、おじいちゃんやおばあちゃんとの話を書いた作品の方が印象に残りました。
角野 核家族時代と言われますが、読んでいてホッとしますね。
中田 いいものがおじいちゃんおばあちゃんからしっかり引き継がれていることが手にとってわかり、嬉しかったです。
まずは、自分の身近なことから。
板垣 今年感じたのは、高校生も世の中の動きに敏感なんだなということ。世の中で問題になっている様々なテーマについて考えていて、内容がバラエティーに富んでいて面白かったです。あとは、それをどれだけ考えて、どこまで掘り下げていくかですね。
角野 最近の高校生がどうしてそんなに世の中の動きに敏感なんだろう……と考えたら、それはインターネットでニュースを見ているからなんですね。新聞を読んだり、テレビのニュースは見ていなくても、インターネットで世の中の出来事を知り、社会のことを考えるようになったんだと思います。そう考えたらインターネットの力って、すごいですね。
川名 高校生の皆さんは、身近にあるものから刺激を受けて考えると思います。もっと社会に目を向けて欲しいという気持ちはありますが、まずは自分の身近なことから考えて、普遍的な話に広げて欲しいと思います。
会話文を使うとイキイキとした表現に。
川名 毎年のことですが、入賞作でも最後の数行が無ければもっと良かったのに……とか、タイトルをもう少し工夫すればいいのに……という作品がありますね。タイトルや書き出しがいいと期待感が大きくなって、「作品を読んでみよう」という気持ちになりますし、最後の数行が無理矢理まとめた感じだと読後感が悪くなります。書き出しと、締めくくり、そしてタイトルに気を配ってください。
杉山 不思議なことに、上位に残るいい作品は、ほとんどが字もきれいです。
角野 パソコンで書いた作品にもいい作品はありますが、原稿用紙に出力するのか、無地の用紙に出力するのかで印象が変わってきます。パソコンで書くときは、出力する文字の大きさや一行の文字数、文章の配置などにも気を配ると、印象が変わってきます。空白があり過ぎると、間が抜けた感じになることもありますから。
杉山 「エッセイを書く」とか「応募する」となると、つい背伸びをしてしまって、難しい漢字を使う人がいますね。この言葉は無理に漢字を使うより平仮名や片仮名の方がいいのにと思うケースがいくつもありました。難しい言葉ではなく、平凡な言葉でも、自分の言葉で表現すると、読者の心を打ったり、読後感がすっきりするものです。また、「させていただきました」「おっしゃいました」といったていねい過ぎる言葉づかいにも違和感を感じました。
加藤 社会福祉施設の実習などに行くと、事前の研修でそういう言葉づかいを指導されますから、それがエッセイを書く時にも出てしまうんでしょうね。
板垣 自分の生活の中にあることとか、自分の言葉の感覚をもっと大事にして欲しいですね。無理して難しい言葉を使う必要はありません。上位に選ばれた作品を見ても、自分の生活に根ざしたことを書いた方がイキイキとした文章となり、高い評価を得ています。
角野 そういう面では、会話文をうまく使うと、イキイキとした表現になると思います。日常的に使っている会話を書いた方がその人らしさが出て、強い印象が残ります。
中田 登場人物の描写や会話が具体的に書かれている方が、私も好印象を受けました。特に第1分野や第2分野、第3分野といった生活に関わるテーマは、自分が体験した周りの人とのやりとりを具体的に書いた方が魅力的になります。今年は作者の気持ちが伝わってきて、「頑張れ!」と応援したくなるような作品が何点か入賞しました。
川名 第4分野でも、自分が感じたことを公の憤りに変えて表現していくといいのではないでしょうか。
加藤 そのためにも、「エッセイコンテストに出すから」ではなく、普段から考えていたり、友だちや先生とテーマを決めてディベートすることが大切なんだと思います。今日は、長時間にわたって審査していただき、ありがとうございました。
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