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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第1分野 人とのふれあい

審査員特別賞 「携帯の音」
沖縄県立名護高等学校 三年 太田 美也子



 今日もいつものように私の部屋に携帯の音が響く。今、流行の着メロがメールの受信を私に知らせる……。
 携帯を持ち始めてもうすぐ二年になる。この二年間、私の携帯に休暇など一日もなかっただろう。毎日、毎日、家族や友達との連絡手段として、遠い距離を越えて結びつけてきてくれた。自分の意志を文字にして、絵文字にして送るだけで、なぜかホッとする。人見知りな私でもメールの中では緊張せずに素直になれた。こんな風に高校生なら誰でもわかるメールの楽しさや便利さに、私はのみこまれていったのだ。そんなある日、よくメールをする一人の友達にこう言われた。
 「みやこは話をしてるとき人の目を見ないよね?」
 「恥ずかしいからさぁ……。」
と、私は言い訳をした。しかし機械的な文字になれてしまった私の意志の伝え方。いつしか人の瞳を見て話すという当たり前の行為、簡単なはずの行為ができなくなっていたのかもしれない。
 「でも、目を見るって大切じゃない? 相手に失礼だし、瞳には人の気持ちがあるんだよ。」
その私に真剣にぶつかってきてくれた友の一言に、私は今まで信じていた携帯によるつながりが、心のないつながりであったのだと気付いた。改めて友の瞳を見つめると、日頃の整った文字からは伝わってこない、意志や思いやりがあふれていた。言葉にすることのできない思いが人の裏側にはあり、それを全身で受けとめることが、本当に人を理解することである。そして、それこそが本物の心のつながりなのであろう。
 私には瞳がある。声にして叫ぶことができる。そう気付いたその日から、私は少しずつ相手の瞳を見るようになった。そして多くの瞳に励まされ、勇気をもらった。今日も携帯は鳴り続ける……。しかしその音は以前よりも軽くなった。私には意志を伝える瞳があるから。



講 評  携帯電話を通したコミュニケーションに、今の若者の気持ちや行動がよく表れています。成長途上の高校生にとって普遍的なテーマである「人間関係に対する不安」に真正面から取り組んで書いている素直な気持ちを評価しました。ただ、話の盛り上がりに欠け、インパクトが弱くなった点が残念です。審査員の間で評価が分かれる作品だったこともあって、審査員特別賞になりました。



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